「あの星にとどかない」2019年再演 東京ver.
【あらすじ】
宇宙工学の研究をする若い科学者・マコト。
研究所の主であるカオルさんと一人娘のトコに支えられながら日夜研究に励んでいる。
ある日、マコトは自宅で謎めいたメモを見つける。
メモをきっかけに、夢とうつつの境目をさまようマコト。
欠落した記憶と、繰り返しよぎる幻。
「幸福は確かにあって、だけど目には見えない。人は幸福の痕跡を目にしてようやく、そこに幸福があったことに思い至る。
僕らは、……僕らはあのとき幸福だったんだ。まちがいなく。」
【募集キャストについて】
■主要男性キャスト 1名
①マコト
20代~30代に見える男性。
基本的には理系の男の子です。
演者が理系の男の子のステレオタイプに沿う必要はひとまずありません。
台詞例
「僕は今、地上で一番宇宙に近いところに立っている。高いところはもっとほかにあるけど、でも確かにここは、宇宙に一番近いところ。足の裏を、ぴったりと地に沿わせて、大気の向こう側に、宇宙のほんとうの顔を見つめている。光――、ひかりは僕たちの身体を、音もなく突き抜けてゆく、微かな、感知できないほどの傷を僕たちに与えながら。」
「幸福は確かにあって、だけど目には見えない。人は幸福の痕跡を目にしてようやく、そこに幸福があったことに思い至る。僕らは、……僕らはあのとき幸福だったんだ。まちがいなく。」
■主要女性キャスト 3名
①チコ
マコトが夢の中で出会う女性。10代~20代女性。
ヒロインですので透明感を求めます。
台詞例
「鍋の中には潰れた木苺がてらてらと濡れた光沢を放っていた。赤い光。老いた星の光だ。
いずれこのジャムは瓶の中に閉じ込められて、私たちが食べても食べなくても一週間の命、
その事実が、その色が、どうしてもかなしくて。」
「赤い実をつける木になりたかった。あなたの庭で、小さな木陰を作って、あなたの休む場所を作りたかった。
あなたが喉の渇きをおぼえたときに口にする実が、わたしの枝にあるようにと、そう思った。
だけど、」
②トコ
マコトの娘。
作中年齢ははっきり定めていませんが、10歳未満、おしゃまな女の子。
演者は年齢的にはマコトと同世代かやや若く見えてほしいので、10~20代女性。
台詞例
「なつのはたけかあ。わくわくするね。さむいのがおわって、あったかくなって、あっつくなって、植物がみんな元気になって」
「あかいろは血の色です。血が赤いのは生きている証拠だけど、血が流れるのはつらいことです。だからあかいろは、生きていく苦しみの色です。
みどりいろはあかいろの反対の色です。だからみどりいろは、赤い血をもつ生き物が死んだときの色です。赤い血の生きものの死体が、くさって、土の栄養になるから、だから木の葉はみどりいろをしています。」
③カオル
マコトの師。
30代後半~50代女性。
演者は設定と同世代~20代女性まで可です。
家庭的でもあり進歩的でもある女性です。
台詞例
「ねえ……私、科学が傲慢だとか、そういうことを言うつもりはないの。科学は膨大な事実を積み重ねて人間が少しずつ確かめてきたことの集合体であって、それ以上でも以下でもない。けれど、科学は人間を救うには、時に信じられないほど無力で、嫌になる。
信仰の一つぐらい持っていれば救われたかしら。でもあなたはきっと、そんなものにすがって救いを求めるのは現実逃避だと、そう言って私を叱るわね。」