somewhere in the dark

Pocket


「いい女の子は天国に行ける、悪い女の子はどこへでも行ける。」

どこで聞いたんだっけ、検索したら女優の言葉。
含蓄のある言葉だなあと思って、年単位で何度も反芻してるけれど、
私はといえば、いい女の子にも悪い女の子にもなれないまま大人になってしまった実感がある。

天国になんて行けっこないのに、どこへでも行けるなんてそんなことだってなくって、
ああ、マジメぶってるの、損だな、って、こういうときに思う。

正真正銘「女の子」だった頃の悲しさを考えたら、
ひとまずここまで歳をとれたのはきっといいことなんだけど。

もう少しあの頃、かわいかったらよかったな、
もう一歩、危ないことにも踏み込んでみればよかった。
「行こうと思えばわたしはどこへでも行ける」、って確信さえあれば、
もう少しだけ安心して、ここに居続けることができる気がする。
それだけが唯一、あの頃やりそびれたことなのかもしれない。

とうに少女ではなかった16歳のころのことを考えるし、
その頃よりもよほど幼い顔で、危ういことをたくさんした22歳の頃のことを考える。
未だに時折、思い出が膿をもって腫れ上がる。

悪い女の子になりきれないから、
あの頃、きみのところへ行けなかった。
いい女の子にはとてもなれないから、これから先、天国にも行けそうにない。

せめてきみだけはわたしを許さないでほしい。
わたしが悪い女の子だってかたくなに信じて、
わたしを忘れるぐらいだったら嫌いでいてほしい。

――どこに向かうためでもない、凡庸でつまらない悪事のひとつとして、
思い出に呪いをかけながら泣いている。