美しくあること、見つけてもらうこと

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見目が美しかったこともなければ、平均より美容に関心を持っていた覚えもないのだが、何の因果かここ2年ほど、化粧品を売る商売に関わりながら糊口をしのいでいる。
どうしても、いわゆる「女らしさ」をいとわない女性が多い業界に、
たまたまスキルが合致しただけの、私のような女がまぎれているのは、わりあい奇異なのではないか、と思わないこともない。

男性も容姿を問わずそれなりにいるわけで、無頓着そうな眼鏡女が一人紛れているぐらいのこと、実は特に気にする人もいないのではないか、という気もするのだが。
この業界に身を置いていながら、いまだにひとりでデパートのコスメカウンターに行くのは気が引けてしまう自分のことをそれなりに恥ずかしく思ってはいる。

わずかにずれたところに座る自分のたった2年弱のキャリアで、確信をもって語れることなんてひとつもないけれど、
品物よりも夢を売る商売をしているな、と感じる瞬間は多い。

ただでさえ美しいモデルを何百枚と撮影して、1枚のベストショットを必死で選び抜いて、
法律ギリギリのラインをかいくぐる表現を必死で探して、夢のような言葉に、ほんの小さな、ぎりぎり読めるか読めないかの注釈を入れて、嘘はついていないとアピールをして。
顧客をごまかしているようで、とことん忌まわしい仕事だと思う日もあるけれど、何より尊い天職だと思う日もある。

どんなにいい品物でも、中身がいいだけでは、売れないのだ。
目に留まらなければ。知ってもらわなければ。

色々鑑みて、自分が演劇をやるときに宣伝というのはかなり意識的に最低限にしてきたところがあると思うけれど、
キャストやスタッフにきちんと対価を支払ってプラマイゼロ、に近づけていくにはどうしたらいいのか。
自分が軸になって作る作品は、どんな人に届けるべきものなのか。
もっといろんなことを考えてお芝居を売らないと、趣味としてもやっていけなくなってしまうだろうな、と怯える日が確かにある。

そういうの、忌まわしいと思うばかりじゃなく、天職だと思う日もあるわけだし。

仕事帰りに凝った首をほぐそうと上を向いたら、星がやたらするどくまたたいていた。
ほんとはこんな風に何気なく、見つけてもらえればいいんだけど、
何気なく見つけてもらうために必要な、恒星のその熱量を思う。